令和6年度の防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」に関する情報開示請求を行いました

 令和6年度は8月29日付けで防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度の採択結果が出たようです。今回の採択結果は下記のリンクから確認することができます。北海道大学からは一度に2件が採択になるなど、この制度の利用しようとする気運は学内で高まってきているようです。

https://www.mod.go.jp/atla/funding/kadai/r06kadai.pdf

 北海道大学教職員組合では防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度について、学内の申請や審議に影響を与えないように、採択結果が出てからその年度の審議過程をモニタリングする方針を取っています。

 国立大学としてこの制度を利用することについての是非の議論が存在しますが、どのような根拠やどのような審議過程でこの制度の利用が認められたのかについて、資料に基づく冷静な議論を行う必要があります。この観点から、北大職組では、学内で本制度への申請可否を審査する「研究インテグリティ委員会」の審議資料を情報公開請求して、ホームページなどで公開しています。

 今回もその審議過程についての情報公開請求を行いました。開示され次第、またホームページなどで公開したいと思います。

 なお、昨年度に請求した内容は下記ページで公開しています。

 一部ニュースでも報道されましたが、今年度に北海道大学は防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」に採択されました。事務部班では、この制度がど...

 また、情報公開を受けて投稿した昨年度の機関紙「ほくだい」の2023年度9月号の記事を再掲します。

※以下は機関誌「ほくだい」の2023年9月号に掲載した内容です。


防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」に北大から採択される
~ 組合では研究インテグリティ委員会の審査内容を情報公開請求で確認 ~

 防衛装備庁は 8 月 10 日、安全保障技術研究推進制度 2023(R5)年度の新規採択研究課題を発表しました。この中に北海道大学から申請された「災害医療対応・外傷処置・外傷手術 XR 遠隔支援システムの開発」(大規模研究課題)がありました。

 2016 年度にこの制度に採択されたものの、学術会議の声明を尊重して 3 年目の研究を辞退した経緯が北海道大学にはありました。その後北大は、「国内外の軍事・防衛を所管する機関等との研究の取扱い」を 2022 年 9 月に役員会決定し、その後に設置された学内の「研究インテグリティ委員会」での審査を経て、防衛装備庁の同制度に応募できる体制を整えていました。

 そこで今回の採択の情報を得て、本労働組合では研究インテグリティ委員会における令和5年度防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」の審査にかかる法人文書を情報公開請求し、9 月 25日付けで文書の一部開示を得ました。開示された文書から判明した内容は主に次の通りです。

・公開された資料は令和5年3月28日(火)に実施された「令和4年度第4回研究インテ
グリティ委員会」の議事次第と附議資料、議事録等の資料。

・審査にかかった申請は合計3件。1件は「情報科学研究院・医学研究院・大学病院」を関係部局とするもので、これは採択があった「災害医療対応」の研究課題のものと思われる。なお今回、関係部局として医学研と病院が関わっていたことはこの情報公開で初めて確認できたと思われる。もう2件は「電子科学研究所」を関係部局とするもの。この電子研の2件の内、1件は「研究代表」、1件が「研究分担」の申請だが、同時に審査にかけているため、同一研究者か同一研究チームが、自身を代表とするもの1件と、他機関の研究者が代表になるものの分担としての1件を、同時に審査したものと推測される。なおこの電子研の申請について、代表分は防衛装備庁の採択リストに見つからないため不採択となったと思われる。分担分が採択となったかは、代表機関がどこであるか不明のため、把握できていない。

・委員会委員名簿は公開された。増田研究担当理事、行松リスク管理担当理事等が氏名を明かして公開された一方で部局から選出された3名の教授のみ、氏名は公開されなかった。

・議事録によると、審査に付された3件は、委員会によるヒアリングを経た上で、予め用意された「審査票」の評価内容を満たすものと判断され、申請することが「可」と判断された。しかし3件とも、申請において「大学の取扱い基準を遵守すること」「防衛装備庁から研究計画変更等の要請があった場合は速やかに大学に報告すること」「必要に応じて再審査(フォローアップ)を受けること」等を制約するという条件が付与された。さらに電子研の申請2件については「軍事応用の可能性や民生分野以外で懸念される用途」について増田研究担当理事等に追加で説明を行うこと、等がさらに条件とされた。

・申請書本体等、研究代表者や研究課題の具体的な内容を確認できる文書は不開示となったため公開されなかった。

(私見:今回公開された文書は本学の透明性確保と説明責任を充分に果たすものか?)

 「開示された文書」の中で黒塗りとなっていた主な部分は「研究代表者・研究分担者の氏名」「審査委員の内の、部局から選出された3名の教授の氏名」「電子研の申請に対してヒアリングで出た審査員からの意見」の3点でした。文書の大半は公開されたと評価できると思います。

 情報開示された文書には「審査要領」と「審査票」が含まれたことから、申請を「可」とした判断基準を確認することができます。一方で、もしも今回の申請が「不可」と判断された場合に、その根拠を、今回と同じ開示基準で把握することができるかについて、やや懸念があります。大学はヒアリングで出た「意見」部分を黒塗りとしましたが、これは発言者を明らかにしない範囲で、かつ、要約する等して申請研究者を特定できないようにした上で、議事録とは別の審査結果要旨などとして積極的に公開した方がよいと感じました。

 黒塗りとなった3名の教授の氏名については、任期が令和6年3月31日までとまだ在任中であることから、任期中は氏名を不開示とすることには一定の理由があるのかも知れません。しかし、他の理事や事務担当者の氏名を公開するなかで、3名のみを不開示とした処置は、やや基準の不統一性を感じました。少なくとも大学は、委員の任期が終了した後には、審査員となった教授3名の氏名も公開すべきと思います。

 本件は社会的な関心も深く、以上に加えて情報の透明性や大学の説明責任を問う動きは今後も出てくるかと思います。組合は引き続き、大学に対しこれらの要請に真摯に対応するよう求めます。

 本記事の特に「私見」部分は情報開示を行った投稿者の個人的な見解です。現時点で本記事が本労働組合の基本スタンスや公式見解を示すものではない点にご留意願います。また、今回公開された文書は組合ホームページで全文を公開する予定です。