声明「障がい者雇用支援無き「Be Ambitious」であってはならない」

 北海道大学で発生した、発達障害を理由とした職員の雇止め訴訟について、北海道大学教職員組合は声明を発表いたしました。


障がい者雇用支援無き
「Be Ambitious」
であってはならない

 2022年3月31日に発達障害を理由として不当に雇止めをされたとして北海道大学の元職員の女性が大学に対して雇い止めの撤回を行っていた裁判は、2024年8月8日に和解協議が札幌地裁(吉川昌寛裁判長)で行われ、和解が成立しました。関係者によるとこの和解には少なくとも「原告(元職員)が退職を受け入れること」と「北大は障害者に対して合理的配慮を行うこと」の二点が含まれるとのことでした。その他の和解条件は明らかにされていません。

 本件訴訟は障がい者として雇用された職員が、障害に対する充分な合理的配慮が行われないまま、障害そのものを理由として大学から雇い止めを受けたとして訴えがなされました。結果的に元職員は退職を認めたものの、大学が障害者に対して合理的配慮を行うという内容を含む和解が成立したことから、大学は原告の主張の一部を認めて双方が歩み寄ったものと思われます。

 北大職組は雇い止め直前の抗議に始まり、労働委員会へのあっせんや団体交渉、労働審判、そして本件訴訟を通じて、元職員の支援を行ってきました。これらの支援の過程で明らかになったことは、障がい者雇用に対する大学の組織的な支援の欠如でした。それは障がい者の法定雇用率の充足を優先するあまり拙速に配属先を決めたことや、一人一人固有の特性があるはずの障がい者について雇用開始前の特性の聞き取りを怠ったこと、管理職が障がい者雇用支援を部下任せにしていたこと等、障がい者雇用支援についての理解不足や支援不足が原因と思われるものでした。

 北大職組は本件和解とそれに至る各種の交渉を通じ、本学における障がい者雇用対策の不十分さを痛感し、ここに改めて障がい者雇用についての抜本的な対応を取ることを大学に求めます。大学は障害者基本法が掲げる「全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」という目的を再確認し、建学の理念である「Be Ambitious」に障がい者雇用支援が含まれていることをその実践でもって社会に示すべきです。